200909_(教育)社会学者,「切り結び」すぎ問題

・先週の土日に開催された教育社会学会のオンライン大会に参加した。

・発表できるようなネタもタネもないので,会員としてずっと聞く側に回っていた。初のオンライン開催なのでどうなるのかなぁ(特に先生方大丈夫かな)と思っていたけど,見聞きする限り特にトラブルがなかったようだし,なにより大会HPが部会を周りやすい・使いやすいUIでびっくりした。事務局の先生方と先輩方が素晴らしい働きによるものと伺い,すげえなすげえなぁ……とリスペクトが高まった(私はすぐ他者へのリスペクトが高まりがちである)。

 

・しかし,ひとつ気になることがあった。「(教育)社会学者,『切り結び』すぎ問題」にぶつかったのである。これまで,主にキャリアが長い先生方が「切り結ぶ」という言葉を使うのを時折耳にしては,「そもそも「切り結ぶ」ってなんやねん……!!!切ってんのかい結んでんのかい!!!(※私は関東人です)」と思っていた。今回も数回聞いてボヘェという気持ちになったので調べてみた。

・ちなみに(教育)社会学者が使う「切り結ぶ」の用例は以下の通り。

(1)「これからの研究の未来を切り結んでいただきたい」(某先生@今回の学会)

(2)「日本の教育現実と切り結ぶ教育社会学を模索し、研究の諸領域を拡大した世
代である。」(佐藤学. (2019). 教育社会学会 編 『教育社会学のフロンティア 1 学問としての展開と課題』(本田由紀, 中村高康 責任編集)『教育社会学のフロンティア 2 変容する社会と教育のゆくえ』(稲垣恭子, 内田良 責任編集). 教育学研究, 86(3), 411-412.https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyoiku/86/3/86_411/_article/-char/ja/

(3)「『近代教育フォーラム』の諸研究は、教育現実と切り結ぶという側面が弱くなっているように思われる。」(広田照幸. (2009). 社会変動と思想運動: 教育思想史学会の歩みを傍観して (報告論文, 検証: 思想運動としての教育思想史学会-私たちには何ができたのか/できなかったのか-, シンポジウム). 近代教育フォーラム, 18, 111-121.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hets/18/0/18_KJ00009887653/_article/-char/ja/

 

 

大辞林には,「切り結ぶ」は「刀を打ち合わせて切り合う」という意味で掲載されている。

切り結ぶ(きりむすぶ)とは - 切り結ぶの読み方 Weblio辞書

しかし,先生方は恐らくそんなおどろおどろしい意味でこの言葉を使っていないだろう。特に用例(1)に挙げた「これからの研究の未来を切り結んでいただきたい」という言葉により,突然知のフロンティアが虐殺の場に転換してしまうわけがないだろう。(分野によってはそんな激しい知の格闘(物理)が行われているのかもしれないけど,もう少し平和では……?いやそういう部会があったらすみません)

・一方で教育学-教育社会学や教育現場-教育社会学のような二項対立(連結?)としてとらえればまあ原義でも通じなくはないかもしれない。しかしそれにしても現状の教育社会学と周辺分野との関係性を検討するに,少し強すぎる言葉に聞こえるようにも思える。

・おそらく他業界の人であろうが,私以外にも「切り結ぶ」という言葉が気になる人はいるようで,以下のブログでは「切り結ぶ」について用例収集していたので紹介。

「切り結ぶ」とは? (気になる言葉) | Weblog Japan

ブログを参照しつつ教育社会学の書籍やこれまでの記憶と突き合わせていくと,「難しいことに取り組む」とか,「研究を整理したうえで新しい研究に発展させていく」とか,「複数分野を架橋する」(どちらかといえば”結ぶ”ニュアンスが強そう)という意味で使っているのかもしれない。